老化は治療する時代へー今日から実践できる老化治療もご紹介ー
アルベイズ梶原Share
こんにちは
アルベイズ梶原です。
アンチエイジングと言うと美容というイメージがあるかもしれませんが、
実は、医療分野もうアンチエイジングしかないんじゃないかみたいな流れになってきています。
というのも、加齢がほとんどの疾患の最大のリスク因子になっているからです。
加齢は最大の発がんリスク
例えば、喫煙習慣があると発がんリスクは2~3倍になります。
一方、加齢による発がんリスクは10代と40代を比較するとがんの種類にもよりますが、約100倍になります。
タバコとは桁が違います。
明日、世界からがんがなくなったら
がんはどの先進国でも死因のトップ3にランクインする病気です。
が、しかし、実はもし人類ががんを完全克服して、がんで誰も死ななくなったとしても平均寿命は数年しか延びないと試算されています。
心疾患も同様で完全克服しても、寿命は数年しか延びません。
なぜか?
がんも心疾患も加齢が主なリスク因子なので、罹患する人は高齢者が大多数になります。
高齢者だとがんや心疾患で死ななくても、他の病気や老衰で死んでしまう。
ゆえに完全克服しても寿命には微々たる影響しかないわけです。
一方で
老化を7年遅らせる事ができれば、平均寿命は20~30年延びるという試算もあります。
老化は病気?
こういう研究結果から、今、医学界では
個別具体的な病気を一つ一つ治療するのって効率悪くね?
ということで、
老化そのものを治療しよう
という流れになっています。
余談ですが、インドの古典医学のアーユルヴェーダでは「老化は病気」とされているそうです。
最新老化治療法
ここからは現在、研究されている老化治療について紹介していこうと思います。
一部はヒトでもかなりエビデンスが揃っています。
幹細胞で若返り
アルベイズ的にこれを取り上げないわけにはいけないので、まずは幹細胞からです。
海外では間葉系幹細胞の自家移植によって老化指標を改善しようという臨床試験が行われています。(日本では現在試験進行中)
現時点でヒトで確認されている効果としては
- フレイル改善
- 炎症マーカー低下
などがあります。
若返りというよりは、老化の諸症状を抑えるという感じです。
また、幹細胞そのものではなく、
幹細胞由来エクソソーム(つまり上清液)を使って細胞に若い細胞の情報を送るという治療も行われていますが、これは老化そのものをターゲットにしているものではなく、多くは
- 認知機能改善
- 創傷治癒促進
など、老化にともなう症状の改善が目的で行われています。
こちらは幹細胞由来エクソソームは幹細胞移植に比べると低リスクかつ手軽に行えるのがメリットです。
エピジェネティックリプログラミング
老化研究で有名なハーバード大のシンクレア教授は
「老化の根本原因はDNA損傷そのものではなく、エピジェネティックな情報の乱れである」
という理論を展開しています。
そこで、老化に伴って変化する
- DNAメチル化パターン
- ヒストン修飾
- クロマチン構造
などのエピジェネティックな情報を若い頃の状態に戻そうというのが、エピジェネティックリプログラミングの発想です。
具体的な手法として研究されているのが、部分的リプログラミング(OSK、OSKM)です。
これはiPS細胞の技術の応用で、
iPS細胞作成に使う山中因子(Oct4, Sox2, Klf4, c-Myc)を短期間だけ細胞で発現させ、分化状態を維持したまま適度に細胞を若返らせる
というものです。
シンクレア教授のグループがマウスにこのOSKをおこなったところ、
- 視神経再生
- 筋肉再生
- 腎機能改善
- エピジェネティック年齢の若返り
などが確認されました。
現在はまだ動物実験段階ですが、実用化されれば、細胞レベルで若い頃の状態に巻き戻るということなので、寿命がなくなってしまいそうな恐ろしい手法です。
セノリティクス
現在ヒトでの臨床試験が行われているのがこのセノリティクスです。
セノリティクスとは老化細胞を除去することを指す言葉です。
老化細胞とは?
人体の老化には老化細胞と呼ばれる細胞が存在します。
テロメアが一定以上短くなると細胞は分裂できなくなります(ヘイフリック限界)。
普通ヘイフリック限界を迎えた細胞はアポトーシスで死んでいなくなるんですが、たまに死なずに生き残ってしまう細胞がいます。
これが老化細胞です。
この老化細胞は死なずにIL-6など炎症性サイトカインを分泌し続けるので、全身の炎症状態が悪化します。
炎症
⇒細胞ダメージ
⇒老化
という流れになるなので、老化細胞は全身の老化を加速させます。
じゃあ、老化細胞を消し去ろう
という発想でセノリティクスが生まれたわけです。
実際、老化細胞の蓄積が様々な加齢疾患に関与していることが分かっています。
セノリティクスの効果
動物実験では、老化細胞をを除去すると
- 炎症低下
- 寿命延長
- 毛並み改善
- 身体機能改善
などがみられたと報告されています。
ヒト臨床試験は進行中で、結果が待たれるところです。
未来の医療
まとめると、現時点で実用化されている若返り治療はなく、若返りに関しては研究段階です。
エピジェネティックリプログラミングは老化した細胞を逆戻しする技術なので、実用化されればはっきり”若返り医療”と呼べると思います。
一方、既に一部、臨床でも行われているアンチエイジング治療の
- 幹細胞移植・エクソソーム
- セノリティクス
に関しては、若返りというよりは老化の悪影響を軽減して、健康寿命を延ばすという感じです。
もしかすると将来、必要な医療は
- 老化治療
- 外傷治療
- 先天性疾患治療
だけになるかもしれません。
既に効果が確認されているアンチエイジング法
これまではどちらかと言うと未来のアンチエイジングというか若返り法を紹介してきましたが、
実は既に効果がヒトでもアンチエイジング効果が確認されているものもいくつかあります。
エビデンスの強い順に並べるとこんな感じです。
- 運動
- カロリー制限・断続的断食
- 体重管理
- 血糖管理
- 心血管リスク管理
運動
そんなこと分かってるよ!という声が聞こえてきそうですね。
一番アンチエイジングで研究されていて、効果が確認されているのが運動です。
運動によって、単に筋力や心肺機能が維持されるから、アンチエイジング効果があると考えている方も多いかもしれません。
実は運動の効果はそれだけではありません。
もっとミクロな細胞レベルでの影響も大きいことが分かってきています。
ミトコンドリア機能の改善
加齢に伴い、
- ミトコンドリア数の減少
- ATP産生低下
- 活性酸素増加
などの問題が起こりますが、
運動によって
- ミトコンドリア新生
- ミトコンドリア品質管理向上
などが起こることが確認されています。
オートファジー活性化
運動中は一時的に細胞内のATP/AMP比が低下します。
すると
AMPK活性化
⇒mTOR抑制&FOXO活性化
⇒オートファジー促進
が起こります。
その結果
- 壊れたミトコンドリア
- 異常タンパク質
が除去され、細胞ストレスが減ります。
これは低カロリー食や断食と共通するメカニズムです。
慢性炎症の抑制
体が老化してくると
- IL-6
- TNF-α
- CRP
などの炎症マーカーが慢性的に上昇します(炎症老化)。
老化研究者の中には「老化=慢性炎症」と考えている人も少なくないようです。
運動習慣のある人はこれらのマーカーが低いことが確認されています。
インスリン感受性改善
高血糖は
- 糖化
- 酸化ストレス
- 血管障害
を引き起こします。
運動するとインスリン感受性が向上するので、高血糖を防ぐことが出来ます。
FOXOファミリー活性化
運動すると、細胞は一時的なエネルギー(ATP)不足になるので、
- AMPK
- SIRT1
が活性化します。
これらのタンパク質は
- FOXO3
- FOXO1
を活性化します。
FOXOファミリーは
- DNA修復
- 抗酸化酵素産生
- オートファジー
を促進する遺伝子群です。
FOXOファミリーは長寿遺伝子とも呼ばれる遺伝子群で、長寿者ではFOXO3に特定の多型が多いことが知られています。
マイオカイン分泌
近年、筋肉は内分泌器官としても注目されています。
筋細胞から分泌される生体情報分子(ホルモン)をマイオカインと言います。
運動をすると
- IL-15
- イリシン
- BDNF
- SPARC
などのマイオカインが分泌されます。
これらは
- 脂肪燃焼
- 脳機能改善
- 神経保護
- 抗炎症
に寄与することが分かっています。
ちなみにBDNFは脳神経に働きかけ、保護・維持する方向に作用するので、記憶力や認知機能を改善すると考えられています。
認知症予防に運動が良いと言われるのはこういう理由です。
血管若返り
運動すると血流増加によって血管に負荷がかかるため
eNOS活性化
⇒一酸化窒素(NO)増加
が起こります。
結果として
- 血管拡張
- 動脈硬化抑制
- 血圧低下
につながります。
逆に、老化とともにeNOSの活性は低下していくことが知られています。
運動のアンチエイジング効果まとめ
ここまでダーッと運動の効果について列挙してきましたが、まとめると
- ミトコンドリアを増やし、エネルギー産生能力を高める
- オートファジーを活性化し、壊れた細胞成分を除去する
- インスリン感受性を改善し、血糖値を安定させる
- 慢性炎症(Inflammaging)を抑制する
- 血管機能を改善し、動脈硬化を予防する
- 血圧を下げる
- 心肺機能を向上させる
- BDNFを増やし、認知機能や記憶力の維持に役立つ
- うつ症状や不安を軽減する
- 内臓脂肪を減らし、代謝を改善する
- 筋肉量を維持し、サルコペニアを予防する
- 骨密度を維持し、骨粗鬆症を予防する
- 免疫機能を適正化する
- がん、糖尿病、心血管疾患のリスクを低下させる
- 健康寿命を延ばす
- 全死亡リスクを低下させる
運動だけでこれだけの効果があります。
そのため、多くの老化研究者は
現時点で最も確実に寿命を延ばす方法は運動
だと考えています。
カロリー制限・断続的断食
運動の次に研究が進んでいるのが、カロリー制限と断食です。
原理はどちらも同じで、
体(細胞)を軽い飢餓状態にすることで、ホルミシスを促し、細胞老化を遅らせることで身体全体の老化を遅らせる
というものです。
それぞれを具体的にみると
カロリー制限
カロリー制限は通常の摂取カロリーより20~40%減らす方法です。
ただし、栄養失調にならないようにタンパク質・ビタミン・ミネラルはしっかり摂ります。
動物実験ではかなり有望な結果が出ていて
- 平均寿命延長
- 最大寿命延長
- がん減少
- 糖尿病減少
- 認知機能維持
などが確認されています。
インスリンはmTOR等を活性化させ、細胞増殖に働きますが、同時に細胞のメンテナンス機能を停止させます。
その結果、細胞老化を進めてしまいます。
入ってくるカロリーが減ると、糖質などの栄養素に反応して分泌されるインスリンの分泌量が減ります。
インスリンが分泌されなければ
長寿遺伝子であるFOXO3が活性化し、
細胞はメンテナンスモードに入ります。
その結果、細胞老化を遅らせることができます。
適度な低栄養状態によって、インスリンの分泌が減ることによってカロリー制限の健康効果がもたらされると考えられています。
断続的断食
カロリー制限までしなくとも、断食によってFOXO3が活性化するので、アンチエイジングには有効です。
断食で細胞が低栄養状態になるので、PI3K/AKT系が抑制され、FOXO3が活性化するので細胞老化が起こりにくくなります。
FOXO3が活性化して、しっかり細胞が修復モードに入るのに理想的な断食時間は16時間だと言われています。
例えば、
夕食を20時までに終える
→ 翌日は昼12時に食べる
みたいな感じです。
12時間断食でも、効果はあるので、16時間が難しいという人は始めやすい12時間から試すのが良いでしょう。
僕の場合、毎日
夕食を19時までに終える
→ 朝食は7時以降に食べる
というサイクルにしています。
もちろん、丸1日とか3日でも効果はあるのですが、それくらいの期間断食するとなると、導入食や回復食の準備が必要になるので、面倒です。
なので、個人的には12~16時間断食を細かくやっていくのが良いと思っています。
まとめ
やたら詳しくアンチエイジングと医療の未来について書き連ねてきましたが、
まとめると
- ほとんどの病気のリスク因子は老化なので、老化そのものをターゲットにした治療が試みられている
- 一番早く実現しそうなのはセノリティクス
- エピジェネティックリプログラミングが実用化されれば、ヒトは不老不死になりかねない
- 既にヒトでのアンチエイジング効果が確認されているのは運動とカロリー制限・断食
昔から言われている通り、健康(=老化予防)に大切なのは
- 運動
- 腹八分目
の2つです。
この記事を読んでしまった方はぜひ今日から運動と断食を実践して、若々しくなりましょう。
