日本人が知らないがん治療の真実
アルベイズ梶原Share
こんにちは
アルベイズ梶原です。
僕自身が幹細胞と出会うきっかけとなったのが、脳腫瘍でした。
その手術で半身麻痺を負ったときに幹細胞治療を受け、回復した経験からアルベイズを立ち上げました。
膠芽腫(グリオブラストーマ)
その脳腫瘍は膠芽腫(グリオブラストーマ)というがんでした。
膠芽腫は極めて予後の悪いがんで、診断後の余命は約2年です。
僕はいろんな幸運が重なって、診断から6年経ってもまだ元気にしていますが、かなりのレアケースです。
生存に有利な遺伝子変異ががん細胞に2つ重なっていたのです。
MGMT遺伝子プロモーターメチル化
1つはMGMT遺伝子のプロモーターのメチル化があったこと
MGMTはDNA修復に働く酵素で、このプロモーターのメチル化があると、この遺伝子の発現が抑制されるため、がん細胞はDNA修復がうまくできなくなります。
抗がん剤や放射線治療はがん細胞のDNAを破壊して殺していく治療なので、がん細胞がDNAを修復できない方が効きやすくなります。
IDH変異
2つ目はIDH遺伝子に変異があったことです。
IDHの変異はがん細胞でよくみられる変異なのですが、膠芽腫の場合、IDH変異がある方が増殖が遅く低悪性度になります。
IDH変異ありが低悪性度かどうかはがんの種類や他の変異遺伝子との組み合わせによって異なります。
腫瘍増悪?
今のところ体調に問題はないのですが、先日のMRI検査の結果、担当医から
腫瘍に増悪の所見がある
と脅されました。
膠芽腫の細胞の性質の困ったところとして、正常な脳細胞との間に境界を作らずに広がっていくため、手術で完全に取り除くことが事実上不可能です。
僕の場合、元は右脳にいたんですが、脳梁をわたって左脳にまで侵入していたので、切除手術の時には左脳にいたがん細胞はそのまま残っています。
今回はこの左脳にいたがん細胞が復活してきているかもしれないとのことでした。
まだ、よくよくMRI画像を見ると大きくなってる”かもしれない”くらいなので、大丈夫だとは思ってるんですが
もし次のMRIで増悪してたら、もう一回抗がん剤
と言われたので、
抗がん剤またやるのはやだし、
万が一、死んぢゃったらアルベイズを愛用いただいている方々並びに関係各位に申し訳が立たないので、
念のため、治療に効果があると考えられるケトン食をガッツリやって、理論上効果があると考えられるサプリを片っ端から飲んでみてます。
膠芽腫治療の最前線
膠芽腫の治療法について改めて調べまして
という本を見つけました。
著者で医師である福田さんは膠芽腫の患者が希望を持てるようにこの本をわざわざ自費出版されたそうです。
一般向けには内容が難しすぎる気もしますが、今行われている標準治療以外にも治療法が沢山あることは誰にでも分かると思います。
膠芽腫だけではなく、がん全般の話もあるので、膠芽腫患者以外のがん患者にも役立つ本だと思います。
お悩みの方はぜひ読んでみてください。
日本では行われていない治療法もある
まず、衝撃だったのは海外では効果を上げている治療法であるにも関わらず、日本では行えない治療が結構あるということでした。
その理由は使用する薬が日本ではがん治療薬として承認されていないことです。
例えば、糖尿病の治療薬であるメトホルミンにもがん抑制作用があり、標準治療と併用することで治療効果を高めることが報告されています。
しかし、日本国内ではメトホルミンはがん治療薬として承認されていないので、併用すると保険適用外となり全額自己負担となってしまいます。
そのため、日本の病院ではほとんど行われていません。
既に特許を他社が取得している、あるいは特許が切れている薬品をわざわざ承認申請しても、製薬会社は儲からない
というのが、こういった薬が承認されていない理由のようです。
他にもこういう理由で承認されていない薬は沢山あって、患者は効果的な治療を受けられないのが現状です。
ここは法律整備の問題が大きいので、政治家に頑張ってもらいたいところです。
とにかくインスリンを分泌させない
膵β細胞から分泌されるインスリンは数あるホルモンの中で唯一血糖値を下げるホルモンですが、同時に細胞増殖を促進するホルモンでもあります。
インスリンを受容した細胞はPI3K/AKT/mTOR系、MAPK系などのシグナル伝達が亢進し、細胞増殖が活発化します。
細胞増殖に関わるこういったシグナル伝達を抑制することががん治療に効果的になってくるわけです。
ちなみに、2型糖尿病はがん罹患リスクを上昇させると多くの研究で報告されています。
これは2型糖尿病では恒常的にインスリン分泌が亢進しているためと考えられます。
糖質制限が有効
インスリンは主に体が血糖値の上昇を感知した際に分泌されます。
なので、糖が体の中に入って来なければ、分泌されることはありません。
糖質を極力カットすることが有効となります。
YouTubeでも紹介しているケトン食は標準治療の効果を高める可能性があり、海外では併用が行われています。
ケトン食とは?
糖質をカットして、脂質を主なカロリー源とすることで、ケトン体の産生を増やす食事。
正常細胞はケトン体をエネルギーにできるが、がん細胞は糖しか利用できない。
ケトン体:アセト酢酸、βヒドロキシ酪酸、ケトンの3つの物質の総称
ケトン食の有効性
実際、動物実験では
- 生存期間延長
- 放射線感受性増加
- 腫瘍増殖抑制
などの報告が複数あり、有望だと考えられています。
また、ヒトでも有効性が認められたという臨床試験結果、症例報告もあります。
ケトン体はヒストン脱アセチル化酵素を阻害する
ケトン食が有効とされている理由は他にもあり、その1つがヒストン脱アセチル化酵素(Histone Deacetylase、HDAC)をβヒドロキシ酪酸が阻害することです。
がん細胞ではHDACが活性化しており、染色体がヘテロクロマチン化され、主にがん抑制遺伝子の発現が抑制されています。
このようにがん細胞は自身の増殖に有利になるように遺伝子発現を制御しています。
ここでβヒドロキシ酪酸が内因性のHDACの阻害剤となることで、がん抑制遺伝子の発現が増加することが期待されます。
AMPKの活性化
血糖値が低い状態が続くと細胞内のAMP/ATP比が上がります。
この時、AMPKが活性化し、FOXO3aをリン酸化します。
リン酸化されたFOXO3aは活性がONになり、細胞質から核内に移行し、
- 抗酸化酵素
- DNA修復
- 細胞周期停止(増殖抑制)
に関わる遺伝子の転写を活性化させます。
逆に増殖シグナルであるAKTにFOXO3aがリン酸化されると、活性がOFFになり、核内から細胞質に戻ってしまいます。
(AMPKとAKTでリン酸化するアミノ酸残基が異なるので、同じリン酸化でもオンオフが逆になります)
糖尿病治療薬のメトホルミンはミトコンドリア機能を阻害することでATP産生を抑制し、AMP/ATP比を上昇させるのですが、この時AMPKが活性化するためにがん治療にも効果があると考えられます。
がん幹細胞への作用
また、FOXO3aが活性化すると膠芽腫がん幹細胞の幹細胞性が低下することが報告されています。
「多くのがん組織には全てのがん細胞を生み出しているがん幹細胞がいて、こいつが残っている限り、延々とがん細胞が生まれてくる」というモデルが現在がん研究では主流になっています。
末端の構成員をいくら逮捕してもトップを捕まえない限り解決しない”トクリュウ”のようなものですね。
なので、このがん幹細胞をやっつけなければ、事件は解決しません。
FOXO3aは幹細胞の未分化性維持シグナルと拮抗するので、分化レベルの低いがん幹細胞の分化を促進させ幹細胞性を失わせる方向に働きます。
(がん細胞は基本的に分化レベルの低いものほど悪性度が高いです)
また、分化を促進させるレチノイド(ビタミンA誘導体)もがん幹細胞の分化レベルを上げ、幹細胞性を失わせる作用が確認されています。
特に急性前骨髄球性白血病ではオールトランスレチノイン酸が特効薬となっています。
ビタミンD3(活性型カルシトリオール)
実はがん幹細胞の幹細胞性を失わせる方向に作用するのが、ビタミンD3です。
Wnt/β-catenin経路は胚発生に重要な経路ですが、がん幹細胞はこの経路を利用して自身の幹細胞性、未分化性を維持しています。
この経路が活性化されたとき、細胞質の遊離β-カテニンは分解されずに核内に移行し、転写因子TCF/LEFと結合し、活性化させます。
活性化したTCF/LEFは増殖や幹細胞性維持に関連する遺伝子群の転写を促進する、というメカニズムでがん幹細胞の幹細胞性維持を行っています。
ビタミンDはビタミンD受容体と結合し複合体を作ります。
この複合体がβカテニンと結合するため、増殖に働くTCF/LEFは結合できず、増殖スイッチがオンになりません。
レスベラトロール
レスベラトロールはブルーベリーの皮などに含まれるポリフェノールで、抗がん作用が研究されている物質です。
細胞実験、動物実験では、がん抑制に有効という報告が多数あります。
レスベラトロールは、上にも出てきた
- AMPK
- SIRT1
- FOXO
などを活性化し、がん抑制に働きます。
ヒトでは経口摂取しても血中濃度が高くならないことがネックで、まだヒトでの有効性は確立されていません。
現在は標準治療の補助的な位置づけで使用されることが多いようです。
アセチルカルニチン
ヒストンアセチル化酵素はアセチルCoAをアセチル基の供与体としてヒストンをアセチル化しますが、
アセチルカルニチンは細胞内でアセチルCoAへ変換されアセチルCoAプールを増加させます。
そのため、ヒストンアセチル化促進に働きます。
また、アセチル基をCoAに渡したあとのカルニチンも長鎖脂肪酸のβ酸化で重要になります。
MCTオイル
MCTオイルはケトン体の産生に有効です。
そして、ケトン体は飢餓シグナルとして働くので、AMPK、FOXO3の活性化に有効です。
糖質制限にMCTオイルを加えるとケトーシス状態を効率よく保つことができます。
長鎖脂肪酸は
消化分解
⇒小腸上皮細胞に取り込まれ
⇒再エステル化、トリグリセリドに変換
⇒キロミクロン形成
⇒リンパ管
⇒静脈
⇒全身を循環
⇒肝臓
という、ながーい経路をとるので、肝臓に到達してケトン体になるのに時間がかかります。
また、全身を回っている途中に脂肪組織や筋肉に吸収されます。
ちなみに、ケトン体を大量に産生して全身に供給できるのは肝臓だけです。
一方、中鎖脂肪酸は
分解吸収
⇒小腸上皮細胞に取り込まれ
⇒再エステル化されず、直接アルブミンと結合
⇒門脈経由で肝臓へ
という流れで、スピーディーに肝臓まで運ばれます。
さらに肝細胞内でも、カルニチンシャトルを介さず、直接ミトコンドリアマトリクスまで到達します。
つまり、中鎖脂肪酸は長鎖脂肪酸に比べると
肝臓に到達するまでが早い
+
肝細胞でβ酸化されるのも早い
ので、
中鎖脂肪酸はより迅速かつ確実にケトン体に変換されます。
まとめ
YouTubeでちょうどケトジェニックダイエットについてお話していたところだったので、調子に乗って、
とりとめもなく、書籍の内容を基に代謝とがんとその治療法の話を書き殴ってしまいました。
まとめると、
がん治療には日本では一般に行われていな治療法が結構ある
ケトン食のような体を擬似的に飢餓状態にする食事が有効
他にも、日本では使われていないがん治療薬は沢山あるので、詳しく知りたい方は膠芽腫(グリオブラストーマ)の根治を目指す補完・代替療法を読んでください。
福田先生の他にもがん治療に関する本を色々執筆されているので、そちらでも良いかもしれません。
余談:飢餓と寿命
シグナル伝達を見ると
がん抑制シグナル≒飢餓応答≒長寿シグナル
となっているので、過栄養状態よりもやや低栄養状態のほうが、がん予防やアンチエイジングには良さそう。
少なくとも動物実験ではカロリー制限で健康寿命の延長が確認されている。
栄養失調になるのはダメだけど、理論的には過栄養状態は避けた方が良いと考えられます
特に飢餓状態で活性化するFOXO3は寿命と関係が深く、
100歳以上の人の遺伝子を検査するとFOXO3に特定の多型が多いこと
が様々な地域での調査で分かっています。
ヒトの体はほどほどに飢餓状態の方が長生きする設計になっているのかもしれません。

