幹細胞で人体実験【アルベイズ開発秘話3】
前回は左半身麻痺の状態で九州の実家に帰ったところまでお話しました。
ここから、紆余曲折があってアルベイズの誕生につながります。
これまでの開発秘話はこちらです。
今回の目次
- 失意の田舎暮らし
- 再生医療認定医との出会い
- ヒト幹細胞培養上清液での治療
- 幹細胞投与
- 命がけの人体実験
- 末期がんに幹細胞治療
- 幹細胞投与の効果は!?
- 幹細胞の力を知ってほしい
失意の田舎暮らし
実家は想像を絶する田舎で、見渡す限り「田んぼ、山、川」の中にちょこちょこ民家があるような場所です。
大学生の頃、旅行ついでに遊びにきた同級生に「ガチでどうやって生活してるのか想像できない」と言われるレベルの田舎です。
ちなみに、その発言をした同級生も自分も田舎の出身だと言っていました。
現在はバスは廃線、列車(電車ではない)は最寄り駅まで車で20分。一番近いスーパーはつい先日潰れて、最寄りでこれまた車20分になってしまいました。
これはフリー素材ではなく、実際に家の前から撮影した風景です(笑)
運転できない=足がない
バスもない、電車もない、タクシーも配車圏外なので、車は1人1台必要です。
車がないと買い物にも行けないので。
しかし、僕自身はてんかんのせいで運転ができません。
出かけるときは両親と予定を合わせて送迎してもらうしかありません。
幸い今はリモートで仕事ができるので、仕事は問題ないですが、連れて行ってもらわないと食料品も買えません。
ちなみにアルベイズは全国各地をリモートで繋いで運営しています。
佐賀大学医学部附属病院へ転院
佐賀から東京の病院には通えないので、佐賀医大病院に転院することに成りました。
運良く、佐賀医大病院はグリオーマを専門で研究している脳外科がある日本唯一の病院らしく、東京の主治医よりも遥かに病気に関しては詳しかったです。
てんかん治まる
てんかん発作が頻発していた原因は明らかで、東京の主治医が抗てんかん薬の調整を忘れていたせいでした。
手術後、全身に発疹が出て、薬のアレルギーかもしれないということで、それまで使っていた抗てんかん薬を変更しました。
で、その後、発疹はただのニキビだったことが分かって「薬を元に戻そう」という話になったのですが、その後、退院まで薬は変更されず、発作の恐怖を抱えたまま退院することになってしまいました。
医大病院の主治医はなぜこんな処方になっているのか分からないと言っていました。
治療は変わらず抗がん剤
放射線は東京で既に照射可能な最大線量まで照射していたので、これ以上は使えません。
よって残る治療は抗がん剤のみ。
実家に帰ってからも、変わらず月に5日間サイクルで抗がん剤を飲んでいました。
副作用があまりないのに加え、僕の抗がん剤は飲み薬だったので、治療の負担は軽い方だったと思います。
しかし、普通に抗がん剤を使っていても、統計データ通りならあと1年もせずに死んでしまいます。
再生医療認定医との出会い
リハビリのお陰で日常生活には問題ないレベルまで麻痺や脳機能障害は改善していたのですが、それでも以前に比べると左半身が動かしにくかったり、集中力や思考力が落ちているのは変わりませんでした。
本のページがうまくめくれなかったり、となりの部屋で人が話しているだけで本の内容が頭に入って来なくなったり、とそんな状態でした。
「移動もままならず、家の中でも不自由を感じながら残りわずかな余生を生きる」のには耐えられないと思いました。
知り合いの紹介
仕事で付き合いのあった知人から「幹細胞治療のできる医師を知っているから話を聞いてみたらどうか?」と紹介されたのが、現在アルベイズのヒト幹細胞培養上清液を仕入れさせてもらっている再生医療認定医でした。
再生医療というと、iPS細胞など新しいものに目が行きがちですが、幹細胞治療(体性幹細胞を利用するもの)は10年ほど前(2010年頃)から日本でも行われていました。
ちなみに、日本では10年間幹細胞治療による重篤な副作用は報告されていないそうです。
ヒト幹細胞培養上清液での治療
ヒト幹細胞培養上清液は幹細胞を培養するとき分泌される細胞を活性化させる生体分子を多量に含んだ言わば幹細胞エキスです。
名前が長いのでアルベイズでは単に上清液と呼んでいます。
1週間ほど使い続けると、マヒが軽くなっているのを実感しました。
保険適用外で1日2万円なので、お金はかかりましたが。
再生医療の効果を体感して驚きました。
通常、損傷した神経細胞は再生しないので、神経損傷によるマヒは治せないものだからです。
ちなみにアルベイズ製品に配合しているヒト幹細胞培養上清液は僕が治療に使用したものと同一のものです。
これは僕の幹細胞から作った上清液です。
冷凍でもらってきて、解凍、希釈して点鼻してました。
幹細胞投与
上清液の場合、生体分子が細胞によって消費されてしまえば、効果は終了してしまいます。そのため、使い続ける必要があります。
実際、上清液で麻痺が改善しましたが、使用を止めると麻痺が戻って来ました。
幹細胞投与は患者から採取した幹細胞を培養して増やして体に戻すという治療です。
幹細胞は神経細胞へ分化して神経を再生させるのはもちろんのこと
成長因子(上清液の成分)を分泌することで、細胞を活性化してくれます。
つまり幹細胞を体の中に入れてしまえば、半永続的に上清液を投与し続けるのと同じ効果が得られます。
命がけの人体実験
僕と同じ脳腫瘍に対して適応した事例はないんですが、このまま標準治療を続けていても元の生活に戻れる可能性はほぼゼロなので、幹細胞投与をやることにしました。
幹細胞治療が始まって10年間は副作用報告がないということは10年間はおそらく大丈夫だけど、それ以降長期的にどういう影響があるのかはよく分からないということです。
しかし、このまま何もしなければ、10年どころか1年しないうちに死んでしまうので、幹細胞治療をやらないという選択肢はありませんでした。
以前から僕が運営している美容ブログでは、よく「自分で試してみて、その効果を検証する」人体実験報告をやっていましたが、今回は前例のない命がけの人体実験です。
末期がんに幹細胞治療
幹細胞でがん治療を行う研究をされている横山博美医師がその内容をまとめられた本がありますので、興味のある方は読んでみてください。
一昔前だと、幹細胞治療の効果を知ってる医者は自分ががんになったら、幹細胞を投与して自分で治療していたんだとか。
現在は厚労省の方針が変わって、気軽にはやれなくなったみたいですが。
幹細胞投与の効果は!?
幹細胞投与の効果は一言でいうと劇的でした。
先生によると通常、効果が出るには数週間あるいは1回の投与では効果が出ず、2回、3回と繰り返して効果が出るという患者が多いらしいのですが、
僕の場合、投与してもらって家に帰る車の中で半身の麻痺が分からなくなるくらいまで回復しました。
現在も麻痺は戻っておらず、ほぼ手術前と同程度の動きはできていると思います。
認知機能の方もかなり回復して、「周りの音で集中できない」ということはなくなりました。
これも音楽を聞きながら書いています。
幹細胞の力を知ってほしい
他にも色々人体実験をしていたのでグリオーマの方に幹細胞治療の効果があったのかどうかはよく分かりません。
しかし、麻痺と認知機能の回復は間違いなく幹細胞治療の効果です。
この体験から多くの人に幹細胞の持つ力と可能性を知ってほしいと思うように成りました。
そして立ち上げたのが、アルベイズです。
しかし、そう簡単には立ち上がりませんでした。
その話はまた次回、第4話「融資拒否&頭蓋骨喪失」で。